こんにちは!餅月です。
今日は葬儀屋(アンダーテイカー)と兄シエルたちについて考察をしていきたいと思います!
現在青の教団編をへて、
スフィア・ミュージックホールサイドの葬儀屋、兄シエルたちは一見坊っちゃんの伯爵としての立場を脅かすヴィランズとして描かれています。
中でも元死者である兄シエルは
笑顔で積極的に坊ちゃんを貶めるような行動をとっていることから、ただのヴィランズである以上にどこか計り知れない不気味さを感じている方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では彼らが本当に坊ちゃんの敵なのか?について考察していきたいと思います!
今回は、主にスフィアミュージックホールサイド側の発言を引用しながら、それぞれのキャラクターの発言の真意を読み解いていきたいと思います。
彼らのセリフを紐解いてみると、意外な一面が垣間見えてくるかもしれません。
今回考察するキャラクターたちは以下の通りです。
共通しているのは全て、現段階では葬儀屋&兄シエル側についていると考えられる人物たちです。
・ブラバット(スフィア・ミュージックホールの占い師)
・葬儀屋&兄シエル
・エリザべス
・タナカさん
スフィア・ミュージックホール
まずはスフィア・ミュージックホールとしての大枠を考察していきたいと思います。
スフィア・ミュージックホールに属している人物たちは細かく分けると以下の通りです。
・兄シエル(シリウス様)
・お星さま方
・葬儀屋(アンダーテイカー)
・ブラバット
・エリザベス
・(タナカさん※)
ーーーーー越えられない壁-----・S4 (※バイオレットだけちょっと例外)
・スフィア・ミュージックホールスタッフ
・スフィア・ミュージックホール観客
今回の考察の中で重要なのは、越えられない壁より上の人達です。
越えられない壁より下の人物たちは、スフィアの真の目的のために利用されているだけの人々を表しています。
彼らはスフィアが与える無償のサービスなど様々なメリットに釣られているだけの為、スフィアの真の目的とは関係なく、むしろそれらを一切知らされていない部外者です。
そのため今回の考察には含みません。
ちなみにこのスフィアの真の目的とは、
青き星(シリウス様=兄シエル)の復活、そして弟も含めた双子の幸せを意味していると考察しています。
この考察については下記記事にまとめてあります
www.under-taker.com
スフィア・ミュージックホールサイドとしては、まず主にブラバットを中心に考察していきたいと思います。
彼が一番、スフィア・ミュージックホールの存在意義を代表的に発言していることが多いからです。
兄シエル、葬儀屋、エリザベス、タナカさんもスフィア・ミュージックホール側ですが、彼らはブラバット以上によりスフィアの真の目的の当事者に近い立場の為、別枠で考察をしていきます。
ブラバットの発言
それでは早速ブラバットの発言を見ていきたいと思います。
エリザベスに対して
スフィア・ミュージックホールでブラバットと初めに接触したのはエリザベスでした。
エリザベスに対しブラバットはこのように述べます。
ブラバット
「君は…服や靴にとても強い拘りを持っているんじゃない?他にも何か(中略)家族…いや、婚約者かな?そして彼について何か大きな悩みを持っている。(中略)君の明るい未来はその悩みの先にある。何か相談したいことがあればまたおいで。」
黒執事第110話「その執事、喫驚」より引用
このセリフの重要な点は、ブラバットは客としてきたエリザベスのことを容姿や内面まで既に知っていたという点。そしてエリザベスに危害を加えていないという点です。
エリザベスを知っていたブラバット
前半の服や靴に拘りがある、の部分はコールドリーディングである可能性もあります。
ですが、ブラバットはそれ以外にもエリザベスが婚約者のことで悩んでいるというかなり限定的で踏み入った内容を言いました。
ブラバットは以前は当たらないと有名な占い師だったため、これを純粋に占いで当てた可能性は低いです。
その為これらの占いで当たった内容は、誰かがブラバットにエリザベスの詳細を教えたという可能性が高いです。
あの大人数を占っている中で、名乗っていないにも関わらず彼女がエリザベスであると分かるということは顔は勿論の事、すでに相当彼女のことをよく知っている可能性が高いのではないでしょうか。
事前にエリザベスを知る誰かによって、性格だけでなく顔も把握させられていた可能性があります。
この「誰か」とは、当然シリウス様である兄シエルだろうと私は感じています。
実際にエリザベスがスフィア・ミュージックホールに来た時にブラバットがこのトリックを行うことが出来たということは、もっと前の段階から、スフィア・ミュージックホール側はエリザベスを誘い込むためにずっと彼女が来るのを待っていたということになります。
ちょっとぞっとしますね。
エリザベスは区別し、守るべき存在か
このことから、スフィア・ミュージックホールにとってエリザベスは坊っちゃん同様他の客とは明らかに区別すべき存在であったことが分かります。
また区別した後、また相談したいことがあったらおいで。と優しく話を聞く姿勢を見せました。ここは、エリザベス&坊ちゃんに対するスフィアの姿勢と、セバスチャンに対する姿勢の大きく異なる点でもあります。(セバスチャンの説明部分で具体的に説明します。)
これらが示すことは、坊ちゃん同様エリザベスもまたスフィア・ミュージックホールにとって、守るべき真の目的に含まれる人物だからである可能性があります。
何故エリザベスが区別し守るべき存在であるか。
それは偏に兄シエルの婚約者であったからだと考えられます。
セバスチャンに対して
次にセバスチャンに対するブラバットの発言を見ていきたいと思います。
ブラバット
「(占いに来たセバスチャンに対して)いや、君はしなくていい。それくらい見ればわかるよ。だって君ーーー人間じゃないだろ。」
黒執事第110話「その執事、喫驚」より引用
ブラバットは、セバスチャンと坊ちゃんを見た際すぐにびくっと反応を示しました。
そして次にセバスチャンが人間ではないことを言い当てました。
このセリフの重要な点は、
ブラバットはエリザベス同様客としてきたセバスチャンと坊ちゃんの事を、容姿や内面まで既に知っていたという点です。
これらの情報をブラバットに教えたのはエリザベスの時と同様葬儀屋と兄シエルでしょう。
スフィア・ミュージックホールにとって、セバスチャンもまた他の客とは異なり区別する必要がある人物として事前に対策がなされていたことが分かります。
セバスチャンは区別し、排除すべき存在か
また、セバスチャンに対して、スフィア・ミュージックホールはエリザベスと坊ちゃんとは異なる対応をみせます。
それがこちらです。
ブラバット
「僕も人間じゃない何かだと疑っているのかな?(中略)君は懸命に輝く星のきらめきを飲み込む闇。(中略)悪いけど出ていってくれるかなあ?今すぐに。(中略)大丈夫、彼に危害は加えないよ。」
黒執事第111話「その執事、泥棒」より引用
前半部分は占いの体を取っている為少々詞的表現が強いですが、明らかに悪魔としてのセバスチャンを示しています。
しかし問題なのはその後です。
悪いけど出ていってくれるかなあ?と言い、ブラバットはセバスチャンを坊ちゃんから引き離し、ミュージックホールの外に追い出してしまいます。
このことからセバスチャンはスフィア・ミュージックホールにとって、他の客と区別し、坊ちゃんと引きはがし排除すべき存在であることが分かります。
またこれこそが、スフィア・ミュージックホールに隠された、真の目的のうちの重要な1つである可能性があります。
ブラバットは人外の存在を知っている
また、セバスチャンを煽るようにブラバットは自分が人外だと思う?という旨の発言をして見せました。
ブラバットは人外の存在も知っている数少ないキャラクターであることが分かります。
ブラバットが人外なのか人間なのか。
この問題はまだ正解が分かりませんが、私はブラバットは人間であるのではないかと現段階では感じています。
ブラバットが人外か人間かについての考察は、下記記事にまとめてあります!
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ブラバット自身が人外である可能性は低いのではないかとは思いますが、もし仮に人間だった場合、どのようにして人外の存在を知ったのか。また葬儀屋やファントムハイヴ家と出会ったのかが非常に興味深いですね。今後明らかになる時を楽しみにしたいと思います!
坊ちゃんに対して
続いて坊ちゃんに対する発言です。
ブラバットが坊ちゃんを事前に知っていた事、そしてスフィア・ミュージックホールにとって区別すべき存在であったという点はエリザベスやセバスチャンたちと全く同じ理由の考察の為説明を省略します。
ブラバット
「シリウスの加護を受けている人は理想が高く天才肌。そしてちょっと裏表が激しい人が多い。君は素晴らしい輝きを内に秘めているね。でもさっきの闇が君の光に纏わりついている。(※セバスチャンの事)このままじゃ君はキラキラを失うばかりだ。すぐに彼から離れたほうがいいかもしれない。自分で離れられないのなら、僕が手伝ってあげようか?(略)何かあったらまたいつでもおいで」
黒執事第111話「その執事、泥棒」より引用
ちょっとだけややこしいので順番に説明していきたいと思います。
ちょっと裏表が激しい
ブラバットはシリウスの人をちょっと裏表が激しいと言っています。
これは兄シエルと坊ちゃんそれぞれに対して言っている伏線である可能性があります。
坊ちゃんも確かに裏表が大きいです。
ですが、兄シエルもまた別ベクトルに裏表が相当激しい人物である可能性が出ている為、それを表している可能性があります。
兄シエルについての疑惑と、このセリフについての詳しい考察は下記記事にまとめてあります!
www.under-taker.com
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ブラバットは狂信的にファントムハイヴに魅入っているか
ブラバットは坊っちゃんに対し
君は素晴らしい輝きを内に秘めているね。とほめています。
私はこれにちょっと違和感を感じました。
というのも、エリザベスをはじめブラバットは占いの際占う相手の服装などを指摘することはあっても褒めることは無いからです。
事実エリザベスに対しても「服に拘りがある」と言っているだけで、「優しい」「可愛い」など直接的に褒める言葉は一切かけていません。
それにも関わらずブラバットは坊っちゃんに対してのみ君は素晴らしい輝きを内に秘めているね。とほめます。
何がどう素晴らしく輝いているのか、その根拠がない、ひどく抽象的な褒め方なのです。
私はこの抽象的な褒め方に違和感を感じました。
もっと分かりやすく言えば妄信的、とでもいうべきでしょうか…
ブラバットの坊ちゃんの褒めた理由には具体性がありません。
では何故ブラバットが坊ちゃんを褒めたのか。その理由はもはや坊ちゃんが坊ちゃんだから。坊ちゃんがファントムハイヴだから。もうそのような坊ちゃんだからこそ輝いているのだ、と言わんばかりの狂信的な意味合いを感じます。
事実ブラバットは後にこのように発言しています。
ここの青き星は、ファントムハイヴ家の双子、もしくはファントムハイヴを指している可能性が非常に高いです。
ブラバットは過去にどこかでファントムハイヴと接点を持ち、その魅力に憑りつかれた人物である可能性があります。
ファントムハイヴの魅力に憑りつかれ人生を狂わせた人と言えば、サーカス編の黒幕ケルヴィン男爵が思い浮かびます。ブラバットもまた、スフィア・ミュージックホールで兄シエルの蘇生に尽力する背景にはケルヴィン男爵と同じようなファントムハイヴとの衝撃的な出会いがあったのかもしれません。
その出会いがどのタイミングなのかはとても興味深いですね。
もしかするとケルヴィン同様ヴィンセント時代にすでに出会っていたのかもしれません。ただケルヴィンと異なる点はブラバットが人外の存在を知っているという点です。
ファントムハイヴの周りに表立って人外が現れ始めたのはファントムハイヴ家襲撃事件後以降なので、ヴィンセントとは出会っていない可能性も十分考えられると思います。
セバスチャンから離れろというブラバット
またブラバットがしきりに繰り返す言葉があります。
それが以下の通りです。
・闇(セバスチャン)が君の光に纏わりついている
・このままじゃ君はキラキラを失うばかりだ。
・すぐに彼から離れたほうがいい
・自分で離れられないなら手伝ってあげようか?
ここで重要なのは、ブラバットが排除しようとしているのはあくまでセバスチャンのみであり、むしろこれらの発言からは悪魔に憑りつかれている坊ちゃんを心配しているような様子さえ見えるという点です。
ブラバットの発言をかみ砕いてみると、以下の通りです。
・悪魔が邪魔であること。
・悪魔のせいで、坊ちゃんが脅かされていること
・すぐに悪魔から離れたほうがいいという忠告
・もし坊ちゃんにそれが出来ないというのなら、スフィア・ミュージックホールが坊ちゃんを手助けるという主張
この発言から、坊ちゃんに対する敵意は感じません。
むしろ坊ちゃんを心配しているような様子さえ伺えます。
葬儀屋の発言とも一致
またブラバットのこれらの忠告ですが、
実は豪華客船編での葬儀屋(アンダーテイカー)の発言ともとてもよく似ていると感じました。
それがこちらです。
葬儀屋はずっと坊ちゃんの側に悪魔であるセバスチャンがいることを黙認してきていました。
その理由は偏に
・それまで悪魔が坊ちゃんを襲う様子が無かったから
・そして悪魔の人外としての力が、坊ちゃんにとって役に立っているから
だったからである可能性があります。
逆に言えば、これらのどれか一つでも違えた場合には、葬儀屋はセバスチャンが坊ちゃんの近くにいることを許すつもりはないのではないでしょうか。
なので豪華客船編でセバスチャンの走馬燈を見る際、葬儀屋はこのようにいました。
葬儀屋
「前から興味あったんだよねえ…害獣風情が何故お着せで執事なんかしてるのか。見せてもらうよ。君の走馬燈。」
黒執事第61話「その執事、誕生」より引用
これは、葬儀屋は単なる興味本位でセバスチャンのレコードを覗いたわけでは恐らくありません。
葬儀屋は、セバスチャンが、坊ちゃんにとって本当に側にいて利益のある相手なのかを審査する為に走馬燈を覗いた可能性があります。
この時までの葬儀屋は、まだセバスチャンに言うなれば坊ちゃんを預けることを許していました。
その理由は先ほども言ったように今までのセバスチャンが坊ちゃんに害がなく、側にいることで坊ちゃんに利益をもたらしていたからです。
葬儀屋も人外なので、悪魔の力の強大さはわかっていたはずです。
だからこそ、その力が坊ちゃんを飲み込まないうちは、セバスチャンが坊ちゃんの側にいることを黙認していたのではないでしょうか。
しかし葬儀屋はまだセバスチャンのことを怪しみ、確かめるために豪華客船編でセバスチャンの走馬燈を見ました。
その結果、案の定セバスチャンが最終的には坊ちゃんの絶望に濡れた魂を求めていることを知り、「それなら消えてもらおうか。」という判断に初めて至ったのだと思います。
その発言が巡り巡って、「自分で離れられないなら、手伝ってあげようか」というブラバットの発言につながった可能性があります。
思えば葬儀屋の代名詞、「やっと小生特性の棺に入ってくれる気になったのかい伯爵!」というセリフも、坊ちゃんをセバスチャンから引き離し自分の元に来ることを指す保護心からきたものだったのかもしれません。(多分そう。)
この考察については、詳しく下記記事にまとめてあります
www.under-taker.com
以上のことから、私はスフィア・ミュージックホールの目的は坊っちゃんと敵対する事ではなく、あくまで坊ちゃんを悪魔の手から引き離しスフィア・ミュージックホールの思う幸せな環境を坊ちゃんに与えることなのではないかなと強く感じました。
エリザベスがスフィアに加担する理由
次に何故エリザベスが兄シエル側についたのかを整理していきたいと思います。
こちらは原作の中で既に具体的に明らかにされておりますので、考察ではなくまとめです。
エリザベスは兄シエル側に付きましたが、それは坊っちゃんと敵対したいからではなく他に兄シエルを救うには方法が無かったからです。
弟である坊ちゃんが自分に嘘を付いていたことについてエリザベスはショックを受けてはいますが、それよりももし生きていたのがシエルではなく弟の坊ちゃんだと知っていたら、自分はあんなに喜べただろうか?という自分の中の暗い一面にショックを受けています。
エリザベスもまた、とても苦しんでいます。
そしてそれは兄シエルと坊ちゃんの間に揺れ、兄シエルたちのやり方が間違っていると知りつつもそこに加担しない限り兄シエルを救うことが出来ないという板挟みからくるものであることが分かります。
今エリザベスは感情的になっている為坊ちゃんへの怒りも大きいですが、だからと言って坊ちゃんの不幸を心から願っているわけではないことが分かります。
具体的にセリフを引用してみたいと思います。
エリザベス
「(兄シエルに対し)シエル、ごめんなさい。あたしじゃ、貴方を救えない。」
黒執事第113話「その執事、独行」より引用
エリザベス
「(ミュージックホールを探りに来たセバスチャンに対して)ここから先は行かせない!(中略)あたしだってどうしたらいいかわからないの。でもあたしだけはそっちに帰れない!」
黒執事第117話「その執事、丁々」より引用
エリザベス
「もし3年前に戻ってきたのがシエルじゃなくても、あたしあれほど喜べていたかしら?(中略)あたし自分がこんなひどい女の子だなんて知りたくなかった!シエルたちが良くないことをしているのは何となくわかってた。でも、でもまたシエルが死んじゃったら」
黒執事第144話「その執事、御用」より引用
また、スフィア・ミュージックホールが坊ちゃんにシリウス様の罪を被せた際も、エリザベスは一人暗い表情で俯いていました。この表情からは、エリザベスが坊ちゃんが陥れられることを喜んでいる様子は一切見えません。
感情的に今は坊っちゃんに対する怒りがどうしてもあるものの、それでも坊ちゃんの不幸を望んではいないことが分かります。
スフィア・ミュージックホールの本当のシリウス様の正体を知るエリザベスが、それでも今ここで濡れ衣を着せられている坊ちゃんの為に声を上げない理由は偏にそうしないと兄シエルが助からないから、そしてそれ以外の理由にこうすれば最終的に坊ちゃんも兄シエルたちと幸せになることが出来るはずだからである可能性があります。
しかしそうはいってもそのやり方が間違っていることをエリザベスはわかっています。
それでもこれ以外の道ではどうしても兄シエルを見捨てることになってしまう為、エリザベスは黙ることしかできないのではないでしょうか。
また、この時とほぼ同じタイミングで、濡れ衣を着せられ連行される坊ちゃんを笑顔で見送る兄シエルと葬儀屋の姿があります。
これも一見、坊っちゃんの敵ではなく幸せを願っている二人の姿勢としてはおかしいと感じるかもしれません。ですがこれにもちゃんと理由がある可能性があります。
この二人の笑顔を考察する為、次は兄シエルと葬儀屋の言動を見ていきたいと思います。
兄シエルの発言
まず、幼き日の兄シエルと蘇生後の兄シエルの発言を比べてみたいと思います。
ここで重要な点は、幼い頃と蘇生後の兄シエルの発言の中で、坊ちゃんに対し「お前を一人にしない」という旨の発言が一貫しており一切変わっていないという点です。
それを踏まえてセリフを見ていきましょう。
坊ちゃんを「一人にしない」という発言
幼き日の兄シエル
「(ロンドンでおもちゃ屋をやりたいという坊ちゃんに対し)僕しか医者になって近所に住めばいいじゃないか。(中略)領地内の教会で牧師になればずっと一緒にいられるんだよ。なのになんで僕を一人にするの?」
黒執事第132話「その執事、嘉賞」より引用
幼き日の兄シエル
「僕も伯爵じゃなくておもちゃ屋になるーー!(坊ちゃんについていくという意図)」
黒執事第133話「その執事、没了」より引用
幼き日の兄シエル
「やっぱり僕はファントムハイヴ伯爵になるしかないんだね。わかったよ」
黒執事第133話「その執事、没了」より引用
兄シエル
「もう心配しなくていい。二度とお前をひとりになんかしないよ。」
黒執事第129話「その執事、錯綜」より引用
兄シエル
「またこうして世界でたった一人の家族に会えた。とっても嬉しいよ。」
黒執事第141話「その執事、推量」より引用
このように、兄シエルは坊っちゃんと異なり、坊ちゃんとの再会を心から喜んでいます。
また蘇生後の再開第一声が「二度とお前をひとりになんかしないよ。」と言っていることから、兄シエルの中でこの坊ちゃんに対する気持ちは過去から一切変わっていないことが分かります。
坊ちゃんを責めるつもりはないという発言
次に、兄シエルは坊っちゃんをいたわり思いやる発言をしています。
この発言からも坊ちゃんに対し敵意は感じません。
兄シエル
「お前が嘘を吐いていたことを叱るつもりはないよ。むしろお前を嘘つきだと責める奴がいたら僕が許さない。それより僕はお前を褒めてあげたいんだ。この3年間よく独りで頑張ったね。もうお前が嘘を重ねる必要はない。だって僕が戻ってきたんだからね。」
黒執事第140話「その執事、主張」より引用
セバスチャンを除けようとする兄シエル
これらを踏まえ、兄シエルは坊っちゃんとは異なり、セバスチャンには全く異なる態度を見せます。
占いを拒絶したブラバット同様、兄シエルはセバスチャンにこの家から出ていくように言います。
またこの際、特に重要な点として兄シエルはセバスチャンにのみ出ていけと言っており、坊ちゃんに対しては言っていません。
兄シエル
「(セバスチャンのみに対して)ここはお前の家じゃない。出ていくのはお前の方だ!」
黒執事第141話「その執事、推量」より引用
「お前たち」ではなく、「お前」と、セバスチャンのみを指している点が重要であると感じています。
ブラバットも兄シエルも、一貫してセバスチャンのみを追い出そうとしています。
それ以外の坊ちゃんやエリザベスには危害を加える様子は見えません。
このことからも、スフィア・ミュージックホールにとっての敵はあくまでセバスチャンのみであり、セバスチャンを敵視する理由は偏に坊ちゃんの幸せを願う一方的で過干渉な心情からくるものではないかと推測することが出来ます。
葬儀屋の発言
次に葬儀屋の発言を見ていきたいと思います。
葬儀屋もまた、双子に関わる理由として「ファントムハイヴを失いたくないから」という意味深な発言を残しています。
葬儀屋
「ただ、我慢ならなくなったんだよ。これ以上ファントムハイヴを失うのは。」
黒執事第140話「その執事、主張」より引用
この言葉を素直に捉えれば、葬儀屋はファントムハイヴを失いたくない、傷つけたくない。つまり味方であることが分かります。
何故葬儀屋がファントムハイヴに拘るのか。
この考察は大変長くなりますので下記記事をご確認ください!
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シエルを生き返らせた葬儀屋
兄シエルを生き返らせた葬儀屋ですが、それに対し坊ちゃんはおびえた様子を見せます。
その理由は今明かされていないことも含め様々に想像できますが、今の坊ちゃんからしてみれば兄シエルは自分の爵位を脅かすものであり、抹消したはずの過去が蘇ってきた化身の様に感じているのではないでしょうか。
現に現在、坊ちゃんは「兄からシエル・ファントムハイヴ伯爵の座を奪還する!」という名目を掲げ、行動に移しています。
これは、一言で言えば坊ちゃんの変化を表しています。
もっと具体的に言いますと、幼い頃の坊ちゃんの思いと、今の坊ちゃんの兄シエルへの思いは大きく変化したということです。
この変化については下記記事に詳しくまとめてあります!
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先程、兄シエルから坊ちゃんに対する思いは、幼い頃から現在まで一切変わっていないということについて言及しました。
これに対し、坊ちゃんは真逆でむしろ180度変化してしまっていることが分かります。
現に坊ちゃんは兄シエルが殺された直後、現れた悪魔セバスチャンに対し、3回も兄シエルを生き返らせることが出来ないかと望んでいます。
セバスチャンにはぐらかされてしまい結局坊ちゃんのその願いはかないませんでしたが、それだけ切実に願った兄シエルの死者蘇生を悪魔に変わって成し得たのが葬儀屋(アンダーテイカー)です。
なので葬儀屋は、兄と再会し怯えることしかしない坊ちゃんに対し、このように質問します。
葬儀屋
「君は嬉しくないのかい?久しぶりにお兄ちゃんに会えて。」
黒執事第141話「その執事、推量」より引用
私はこのセリフこそが、葬儀屋がスフィア・ミュージックホールを設立してまでして兄シエルを生き返らせ、坊ちゃんに引き合わせた理由の全てなのではないかと感じています。
葬儀屋は、幼きあの日に坊ちゃんが切実に望んだ「兄の蘇生」を叶えてやりたかっただけなのではないでしょうか。
そして家族でまた再会し、兄シエルや過去の坊ちゃんが望んだように二人で幸せに暮らしてほしかった。
だから葬儀屋は悪意なく兄シエルを蘇生したのではないでしょうか。
勿論坊ちゃんの為だけでなく、兄シエルも葬儀屋にとって大切なファントムハイヴだからという理由もあると思います。
しかしそれよりも、嘘をつき、自分という存在を死んだことにしてまでシエルという名前と番犬の仕事を継ぎ自らの手を汚す坊ちゃんに対し、それを哀れに思い、そんな重荷を坊ちゃんに背負わせないようにするために兄シエルは生き返ったのかもしれません。そしてだからこそ葬儀屋もそれに協力している可能性があります。
現に兄シエルは
坊っちゃんに対し「もう大丈夫だよ。」と言っています。
そして葬儀屋も「お兄ちゃんに会えてうれしくないのかい?」と言っていることから、二人からは坊っちゃんに対して敵意が無く、むしろ善意さえ感じ取れることがわかります。
ただし、この二人の好意が坊ちゃんにとって嬉しものかと言われれば、また話は別です。
独りよがりな愛情
葬儀屋と兄シエルは、坊ちゃんに対して敵意がない可能性があることについては考察が出来ました。
しかしそれと同時に、私は
この葬儀屋と兄シエルの坊ちゃんに対する態度が正しい姿勢であるとも、どうしても思えない事もまた事実です。
黒執事の読者の皆様は感じているとは思いますが、兄シエルは不気味です。
どことなく気持ち悪く、歪んでいるような印象を受けている方も少なくはないのでしょうか。
私はその感覚は正しいと思います。
確実に坊ちゃんを愛しているように見えるこの兄シエルと葬儀屋の姿勢。
では一体どこが間違っているのでしょうか?
それは、兄シエルの死者蘇生という願いは幼い頃の坊ちゃんの願いであり、現在の坊ちゃんの願いではないという点を全く無視しているという点です。
現に坊ちゃんは、兄シエルの復活を全く喜んでいません。
確かに、もし兄シエルが命を落としたあの契約の日に、本当に兄シエルが今日の様に復活を果たしていたら坊ちゃんは葬儀屋が思ったように泣いて喜びさえしたかもしれません。
しかしそれはあくまで過去の坊ちゃんであり、その幼き日の坊ちゃんはもうここにはいないのです。
ここが恐らく、兄シエル&葬儀屋と坊ちゃんとの間で食い違ってしまっている点なのではないかと感じています。
兄シエルと葬儀屋は、「悪魔は坊っちゃんを不幸にし、坊ちゃんを最終的に殺す害があるものだ」と思っています。
だからこそそんな悪魔とは引き離し、蘇った肉親と幸せに暮らす方がいいだろうと思い、現在坊ちゃんを囲い込むべくありとあらゆる手段を取っている状況なのではないでしょうか。
しかし、現在軸の坊ちゃんにはこの配慮はいらないお世話であることが分かります。
まず、坊ちゃんは自分が幸せになることをもはや望んでいません。
黒執事14巻で、坊ちゃんはそれを明言しています。
坊ちゃん「僕は幸せになるためにここにもどってきた訳じゃない。僕は戦うために戻ってきた。シエル・ファントムハイヴ伯爵を背負ったからには、もう前に進むしかないんだ。」
黒執事14巻第63話「その執事、修行」より引用
また、坊ちゃんは契約が終了した後に悪魔に魂を取られることさえも、都合がいいと思っており抵抗を見せていません。
坊ちゃんは過去を回顧することなく、もはや吹っ切れて覚悟を決め、前だけを見ていることが今までの姿勢からも痛いほどよく分かります。
それにも関わらず今更幼い頃の坊ちゃんが求めた肉親が蘇ったところで、その再開を坊ちゃんが喜べないのは当然ではないでしょうか。
今回の兄シエル&葬儀屋と坊ちゃんとのすれ違いは、兄シエル&葬儀屋側がこの坊ちゃんの成長を鑑みず少々過保護気味なところから始まってしまっているように私は感じています。
やり方は確実に間違っているとはいえ、根本にあるのが恐らく好意なので、これはなかなか切なく歯がゆい状態です。
葬儀屋と兄シエルは初めから致命的なミスを犯していた可能性
ちなみにですが、坊ちゃんは過去を回顧することなく吹っ切れて覚悟を決めている、と言いましたが、それが一度だけ揺らいだ章があります。
それこそが緑の魔女編です。
兄シエル&葬儀屋たちが現れるひとつ前の章ですね。
この章で、坊ちゃんは一時的に幼児還りをしてしまっていました。
ちょっと考えて見て下さい。
もしあのタイミングで兄シエルと葬儀屋たちが坊ちゃんを迎えに来ていたとしたら・・・・どうなっていたと思いますか?
兄シエルの「ただいま。」と言うセリフも、「もう二度とお前を1人になんかしたりしないよ」と言うセリフも。
全て今の坊ちゃんとは全く違う形で坊ちゃんに届いたのではないでしょうか。
兄シエルと葬儀屋は、緑の魔女編のあの千載一遇のチャンスを逃してしまった時点で、すでに致命的なミスをしてしまっているとも考えられるのではないでしょうか。
もしあのタイミングに葬儀屋たちが間に合っていたとしたら、もしかすると黒執事は全く違う結末を迎えていたのかもしれません。
この考察については、こちらの記事で纏めてあります。
是非一度読んでみてください。
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兄シエルへの黒い疑惑
また坊ちゃんが兄シエルの復活を恐れる理由はそれだけではありません。
それこそが先ほどちらりと言及した、今明かされていないことも含め様々な理由があるのではないかといった点です。
具体的に申し上げますと、兄シエルはファントムハイヴ家襲撃事件に加担した可能性が出てきています。
考察が膨大なため詳しくは下記記事をご覧ください。
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もしこの考察が正しく、その事実を坊ちゃんが知っていた場合、兄シエルに対する気持ちが180度変わってしまうことも無理はないことなのではないでしょうか。
スフィア・ミュージックホールの存在意義
さて、様々なキャラクターの思考を考察してきました。
スフィア・ミュージックホール側の人間は、兄シエル、葬儀屋、エリザベス、すべてに坊ちゃんに直接危害を加えようという敵意が無い可能性が高いことが分かりました。
危害を加えるというよりはむしろ、一度死んでしまった兄シエルを何とか生き返らせるという大きなハンデを追いながらも、なんとか双子が二人でまた幸せに暮らすにはどうしたらいいか。そのために各々それぞれのキャラクターが動いているような気がします。
そして兄シエルと葬儀屋の出した答えが、坊ちゃんを一度陥れ、表社会から失墜させ、セバスチャンと引きはがし最終的に自分たちの元で幸せに暮らすという構図だったのではないでしょうか。
だからこそ、まだ覚悟が無かったエリザベスは暗い表情でその罪の意識に葛藤せざるを得ず、またそれに対し当に覚悟を決めている兄シエルと葬儀屋は、坊ちゃんが多少追い詰められたとしても「結果全て坊ちゃんにとっていいことになる」と信じているからこそ、先ほどお見せしたような笑顔を見せることが出来たのではないでしょうか。
今回記事が長くなってしまったのでこちらでは言及しませんが、タナカさんも似たような理由で兄シエル側に付いている可能性があります。
ただ田中さんが兄シエル&葬儀屋と異なる点は、兄シエルと葬儀屋の行動をかなりシビアな目で見ているという点です。
現にタナカさんは兄シエル側に付いてから一回も笑ったことがありません。
タナカさんも、恐らく坊ちゃんと敵対する意思はなく、また兄シエルたちのやり方に心から賛同しているわけではなさそうです。
しかしエリザベス同様、現実問題双子が幸せに生存する未来を叶えるためには兄シエルたちの方法を実行するほかなく、黙って従っている可能性があります。
詳しくは下記記事にまとめてあります!
www.under-taker.com
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スフィア・ミュージックホールの本当の目的は、シリウス様(兄シエル)を生き永らえさせるために血液を集める血液供給機関でした。
しかしそれは、坊ちゃんに対抗する為という訳ではない可能性が高いと私は感じています。
むしろ、スフィア・ミュージックホールがシリウス様(兄シエル)を復活させた理由は、巡り巡ると、とても独りよがりな考え方ではありますが、坊ちゃんの為とさえ思っているのかもしれません。
餅月