黒執事考察ブログ

黒執事は「腐女子向けの作品」ではない・・!それはあまりにも勿体ない!作品の「嘘」と「伏線」に貴方も騙されていませんか?葬儀屋(アンダーテイカー)についての考察を載せたいがためにはじめたネタバレ有りの考察ブログ

【考察】黒執事第109話「その執事、信仰」

こんにちは、餅月です。
本話より青の教団編がスタートします。

あらすじ

扉絵:眠っているシエルに話しかける葬儀屋
葬儀屋「伯爵、もう少し眠っておいで。まだ目覚めるには少し早いからね。」


ミッドフォード侯爵家のエドワードを突然訪れるグリーンヒル(緑寮の元監督生)
名門寄宿学校ウェストン校の生徒だった彼はその伝統と名声を守るため殺人に手を染めた。関係者によって事件はもみ消され、放校処分となっていた。

グリーンヒル「ミッドフォード、悩みはないか?あの時俺たちは悩みを抱え込み後戻りできないところまで来てしまった。どれだけ嘆いても罪は消えない。ならば今後の俺たちに何ができるのか考えてみたんだ。新しい仲間も増えた。あの頃の俺たちとはもう違う。毎日がキラキラしているんだ!監督生の責任は重い。きっと思い詰めてしまうこともあるだろう。俺はお前に、あの時の俺たちのようになってほしくない。だからミッドフォード、俺たちの集会に参加してみないか?」

グリーンヒルはエドワードに「スフィア・ミュージックホールの招待状を渡します。
招待状を持ち、指定された土曜日にミュージックホールを訪れるエドワード。

チェスロック「なんだオメーもきてたのかよ。」
エドワード「チェスロック!バイオレット先輩に招待されたのか?」
チェスロック「まあな。」

エドワード「ミュージックホールなんて初めてきたが、随分いろんな人がいるんだな。」
チェスロック「ミュージックホールは庶民のための場所だぜ?貴族のための堅苦しいオペラハウスとはちげーんだよ。・・・つっても流石に色々いすぎな気もするが。」

床に座り食べ物を食べる貧しそうな子供たちを見ながらつぶやく。

チェスロック「料理が無料ってのも初めて見る。貴族の慈善事業の一環かもな。」

そこで二人に元監督生の四人が声をかける。

グリーンヒル「今日は語り合おう!みんな一緒に!」
レドモンド「ここでは身分の貴賤などなく楽しめる。みんな一緒に!」
ブルーアー「そして見分を広めようじゃないか!みんな一緒に!」
バイオレット「・・・・・。」

「さあ、キラキラした時間を共に過ごそう!乾杯!」

絵を描いたり、歌を歌ったり、ごちそうを食べたり、勉強を教えたり、各々が楽しい時間を過ごします。
エドワードはそのなかで、ティーカップを手に、人々に囲まれている男性を見つけます。彼はティーカップに人々の血を数的落とし、何やら話しているようです。

エドワード「グリーンヒル先輩、あれはなにをしているんですか?」
グリーンヒル「ああ、ブラバットさんの占いだな。ブラバットさんの占いはよく当たると有名なんだ。お前も見てもらったらどうだ?」
エドワード「いや、俺はそういうのは・・・。」

時計が11時を指します。
グリーンヒル「名残惜しいがそろそろお開きの時間だな。」
レドモンド「じゃあ最後にいつものやるか」
エドワード「いつもの?」
バイオレット「みんなで一緒に歌うんだよ。(楽譜を差し出す)」
エドワード「う、歌!?でも知らない曲ですし」
ブルーアー「大丈夫!下手でもでたらめでもいいんだ!大きな声を出すと気分がいいぞ!」

照れながらも共に歌い踊る

夜も更け、ミッドフォード邸に帰るエドワード

エリザベス「おかえりなさいお兄様。パーティーは楽しかった?いいなああたしも行ってみたい。」
エドワード「そうだな、今度は一緒に行こうか。」
エリザベス「本当!?嬉しい!いっぱいおめかししなくっちゃ!」
エドワード「おめかしなんかしなくても、リジーは世界一可愛いぞ!」



ある日
ファントムハイヴ邸

セバスチャン「坊ちゃん、お手紙が届いております。」
坊ちゃん「女王陛下からか!」

女王からの手紙
毎週土曜日の夜、とあるミュージックホールで行われている不思議な集会を知っていますか?貴族から労働者まで老若男女みんなが夢中になっているのだとか。急激に集客を増やし土曜の夜はホールの前の道が馬車であふれかえるほどだそうです。気になって何人か調査に向かわせたのですが調査報告は異常なし。ただ不思議なことに彼らは調査後もそのミュージックホールに通っているらしいのです。身分のわけへだてなく行うパーティーなど聞いたことがありません。一体あのミュージックホールでは何が行われているのでしょうか?何かよからぬたくらみでもしているのではないか・・・と少し心配です。ぼうやはどう思いますか?


その時、エドワードが血相をかえて部屋に飛び込んできます。

エドワード「シエル!!リジーが…家を出た…!!」
セバス&坊ちゃん「!?」

第109話終



考察

スフィア・ミュージックホール

新たな場所としてスフィア・ミュージックホールが登場しました。
女王が睨んでいることから、何やら怪しいことを行っていそうです。
ちなみにスフィアとは英語で天体を意味します。

当時のミュージックホールについて少し調べてみました。

<労働運動の誕生>
 独自の音楽を生み出せなかったイングランドですが、19世紀のロンドンでは「ミュージック・ホール」と呼ばれる場所が繁栄の時を迎えようとしていました。ミュージック・ホールとは、コンサート・ホールとパブの中間のような存在で、音楽だけでなくお笑いや芝居など、いろいろな芸能を見せる場所として、19世紀から20世紀にかけてイギリスにおける娯楽文化の中心となりました。
 当時、ミュージック・ホールが発展したのには、大きな理由がありました。19世紀前半、イギリスでは産業革命の影響で急速に産業が発展、そのための労働者が増えると同時に労働環境が劣悪化していました。環境汚染、労働災害、職業病、地域社会の崩壊など、現代の我々が抱える社会問題の多くがこの頃生まれたと言えるでしょう。そのため、労働者たちの中から、そうした劣悪な労働条件に対する抗議の声があがり始め、労働運動というものが始めて生まれようとしていました。当然、そうした労働運動は政府にとって都合の悪いものだったため、その活動は地下に隠れるようにして行われていました。そのため、彼らは街中のにぎやかな場所、ライブを聞かせる小さなパブなどに集まっては小さな集会を開いていました。この頃から、すでにライブ・ハウスは、社会にとってのアンダーグラウンドであり、文化の発信地としての役割を果たし始めていたわけです。
 しかし、労働運動がしだいに力を持ち始めると、政府はそれに対し圧力をかけ始めます。そして、その手始めとなったのが、彼らの集会場所となっていた飲み屋をつぶすことだったのです。


<ミュージック・ホール文化>
 政府は前述の小さなライブハウス的飲み屋に対し営業規制を課すようになりました。そのため、政府の許可を得ていない小さな飲み屋はライブを行えなくなり、政府の認可のもとでミュージック・ホールという新しいスタイルの店が登場することになったのです。
 ミュージック・ホールとは、それまでの店よりも大きく、大衆的な店で、当然多くの客に対応するために娯楽に徹した出し物を売りにしていました。当時の上流階級の人々がクラシックやオペラを見ることに喜びを見出していたのに対して、中流以下の人々が求める当たり障りのない娯楽を与えるために生まれたのが、このミュージック・ホールだったわけです。こうして、芸能娯楽文化における二極化が進んだことが、イングランドにおいて芸術性の高い大衆芸能が育ちにくくなった原因ではないかと言われています。

引用源:イングランドの音楽

当時のミュージックホールは、労働運動の集会を行うパブと差別化をするためかなり厳格に政府によって規制されていたようです。
今回は女王が認可したという形ではなさそうなので、恐らくこの丁度間の時期だったのでしょう。
少し先行しますが、第113話にで女王は坊ちゃんに対し「数は力よ。人が集まればなんだってできるわ。商売も、宗教も、戦争もね。」という言葉を発します。
この言葉の理由にはこれらの歴史的史実も反映しているのかもしれませんね。


新たな登場人物ブラバット・スカイ

新たな登場人物として占い師ブラバットが登場しました。
髪には星の飾りがついており、中世的ないでたちです。
個人的には葬儀屋とおそろいの片方だけ三つ編みの髪型が気になりました。果たして二人に関係性はあるのでしょうか?(私はあると思います。)

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黒執事第14巻23巻表紙より



新たに張られた伏線と疑問点

  • キラキラとは何か
  • 当時としては異例であった身分の隔たりのないミュージックホールの運営はどんなメリットがあるのか
  • 料理が無料である
  • リジーはなぜ家を出たのか

プチ・伏線回収

冒頭でグリーンヒルがエドワードを訪ねてきたシーン。
「手紙もよこさずいったい誰が・・。」とぼやいていたエドワードですが、最後に血相を変えファントムハイヴ邸に飛び込んできたとき、坊ちゃんに「手紙もなしに珍しい・・。」と突っ込まれています笑
枢先生のユーモアを感じるプチ伏線でしたね( ^^)

まとめ

女王が睨んでいるスフィアミュージックホール。無料で食事をふるまい、身分の隔たり無く歌いあう民衆の姿はどこか異様です。「偽善」という言葉が一番しっくりくるかもしれません。リジーがなぜ家を出たのか。想像以上に深い結末が待っている予感がします。

餅月